「座らないんですか」
ぽんぽんとおいでの意味をこめてやったけど、彼は首を振った。
「少しの間、一人で考えさせてほしい」
「……。離れることについてですか」
「ここまで来たんだ。君の思いを挫く真似は絶対にしないよ。これは気持ちの固定。後悔ないように一度考えたい」
「分かりました」
言えば彼は消えた。
私の中に入ったのだろう。
胸を押さえる。
ちょうど良かった。私も考えたかったから。
一人で離れたいと奔走してきたつもりだったけど、私は一人じゃないんだ。
ここにきて迷うだなんて。
「私は……」
どうしたいのだろうと、一人ぼやいた。


