致死量カカオ


ぶつくさ文句を言いながら教室に向かって、ドアに手をかけたとき、ふと体が硬直した。


あれ?
今誰かいなかったっけ?


文句で頭がいっぱいでよく見てなかったけれど……確かに、誰かがいたような。っていうかいた。

っていうか誰かってそりゃ見間違うはずもない。

おそるおそる振り返った先には——……。


「お前また保健室で寝てたって?」

「ぎゃーーーーー!!!」


ガタっと大きな音と声を出してドアにへばりついた私に、目の前にいるはずがないのにいる高城が顔をしかめて「うるせ!」と呟く。


いや、いやいやいやなんでいるんですかー!?


「一緒に帰るって言っただろ」


いやいやいや、そうですけど!
だけどなんで!?え?どうして?


「いいからさっさと着替えろ」


頭の中が混乱だ。パニックだ。このまま破裂するかもしれない。驚きでときめきどころじゃないのが幸いだけど……。

……っていうか。私さっきまでなんかしゃべったっけ?ぎゃーって叫んだ以外に口にした覚えはないけど?


「お前って思ってること顔に出てる」


わーお。今のも出てましたかね。


「出てた」


すごい。テレパシーみたい。なにこれ楽しいかもしれない。


「いーから着替えろ!」

「あ、はい!」