もっと図々しい希望を口に出してもいいのなら、あの笑顔を見たい。
一目で恋に墜ちたほどの可愛い高城の笑顔。通りすがりの一瞬だったのに今でも脳裏に焼き付くほどの、笑顔。
格好いい人だとは思っていたけど、目を細めて口を大きく開けて楽しそうに嬉しそうに笑ったあの高城は衝撃だった。
一年以上観察した結果、なかなかそこまで笑うことはないのだろうということはわかったけれど。
それがなおさらあの一瞬の笑顔の価値を感じて胸がぎゅうってなる。
あの一見クールな高城の笑顔。また見て見たい。それが私に向けられる物であればなおいい。
まあそれは私の死を意味するんですけど。
……あ、思い出したらまたくらくらしてきた。
「考えるのも悪影響だな……」
水をもう一度出して鼻血を確かめてから、ここにいたら悶々と読者様が読んでも面白くないだろう脳内独り言をさらす羽目になる……。
とりあえず日陰で安静にしてるか。
いや、ここはいっそ運動でもして気分リフレッシュするか!
よっしゃ!
そう思って運動場ど真ん中を駆け抜けてキャッチボールをする女子の群団を目指した……。
「あ、豊海!」
「んあ?」
私を呼ぶ声が横から聞こえて振り向いたその瞬間、視界は影によって真っ暗になって――……。
顔面に激痛が走った。



