致死量カカオ


誰だよチョコレートはおいしいとか言い出したやつ。チョコレートなんか作り出したやつ。

誰だよ恋愛は楽しいとか言ってるやつ。生死をかけたもんじゃないのさ。そんなものしたくないんですけどー。


「チョコレート食べたいなあ……」


甘いチョコレートを食べたらちょっとは幸せになれるのに。それが駄目なことだって言うのはわかっているけれど。


恋愛といいチョコレートといい。

私の体にいけないものほど私は欲してしまうらしい。


恋愛で好きな人にリバースした瞬間を見届けられながら死ぬくらいならおいしいもの、そうチョコレート食べて一人で鼻血で地面を染めながら死ぬ方が良い。


「やっぱからかわれてるんだよなあ……」


じゃないとおかしい。

昭平に聞けば高城にも友達にも私のアレルギー体質のことは告げたらしいし。


告げられたのにあんな風に手を振るなんて信じられない。信じてないだけかもしれないけど。


――体調治ったら、今日でも明日でも……一緒に帰るから、早く治せ


思い出すだけで鼻血でそう。

ああ、ちょっと頭痛までしてきた。


なにこの展開。信じられない。この記憶だけで死ぬかもしれないなんて結構重傷だ。


昨日、初めて口をきいたのに、まだ24時間くらいしかたってないのに……その24時間で蓄積された高城の声と顔と会話と思い出だけで死にそう。


このまま死んでも良いくらいに幸せではあるんだけど、この中途半端な幸せのままでは死にたくない。