「センセー、体育見学してもいいですか……?」


右手を空に突き上げて、左手で顔、厳密には鼻を押さえて体育の先生に希望を申しつけた。

拒否されても困るんでお願いしますと目で必死に告げながら。


「体調悪いのかー?」

「豊海、お昼まで保健室で気を失ってたんですー」


怪訝そうな顔をする先生に向かって、千恵子が後押し。ついでにティッシュももらって欲しいけど、こんな場所にあるわけもないからとりあえず見学ついでに水で顔を洗いたい。


「熱中症か?じゃあ日陰で休んでろー」

「あざーっす」


ぺこっと頭を下げてとりあえず運動場の脇にある水場にひとっ飛び。背後で「あいつ本当に体調悪いのか」と千恵子に再度疑問を投げかけていたけれど後は千恵子に任した。


蛇口をひねって水を流し、鼻の周りにかぴかぴにへばりついた鼻血を洗い落とそうとこすりつける。

まだ流れているような気がするけど、固まった血が流れているだけなのかどうかよくわからない。


……この先のことを考えて輸血とかしておいた方がいいかもしれない。できるのか知らないけど。

幸いにも私の血液型が世界一位を誇るO型でよかった……。O型最強。


「ぶっは!」


何とか血は止まったようで勢いよく顔を上げて、女の子としてはちょっといけないとは思いつつ誰も見てないだろうと着ていたTシャツで顔を拭った。

よし、血染めなし。

ちゃんと血は止まったみたいだ。とりあえず失血の恐れはなくなった。