「自分から好きになったことがない上に下手にモテるから、愛情表現とか自分の感情とか人の感情に疎いんだよねー」

「余計なお世話だよ」


俺の隣でふんふんと首を上下に振っていた宮木と沢田が「じゃあおもしろいんじゃね?これ」と同時に口に出した。

何がおもしろいんだ。

絶対ろくでもないこと言い出すだろ、お前ら。


「告白されて付き合って、いつものように好きになったけど……彼女はそれを受け止められないってことだよな?

つまり、好きになっても今までみたいに受け身の恋愛はできないってことじゃん」

「……ああ、なるほど」


って俺が納得してどうする。
そもそも好きになってないし。


「そう、つまり!」


裕子が二人に向かって嬉しそうに人差し指をたてた。


「高城が振り回されるかもしれない!」


…………こいつらマジで楽しんでるな。

三人の輝く瞳を見て自分の気持ちが一気にすうーっと冷めていくような感覚に陥った。


「ならねえよ」


小さく呟いて、もう一度運動場を見つめるとまだ心配されている豊海の姿が目に入った。


くだらない。
別に好きでもないし。

確かに俺のことを好きだと言っておいて俺を避けるのは面白くはないけど、だけどこんな感情が恋愛だなんてばかげているし勘弁だ。


ぱしっと窓を閉めると同時に5限目の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。