致死量カカオ


何も知らないから、何も分からないから、だからちょっとしたイタズラだ。

俺は結構な天の邪鬼だったみたいだなと、17歳にして自分の新しい一面を見た期がした。


「……た……」


俺の呼びかけに、千恵子と豊海は同時に俺の方を見て、そして同じように目をまん丸くさせた。

視界には写ってなかったけどきっと宮木や祐子もそんな顔をしただろう。


「体調治ったら、今日でも明日でも……一緒に帰るから、早く治せ」


嫌がらせとしてなのかそれとも豊海のことを知りたいだけなのか、意地なのか自分の感情すらさっぱりわからない。


そのくらい頭で考えるよりも先にそんな言葉が口から出て来た。


俺から女を、彼女を、誘うのは多分今までで初めてだ。


こいつが彼女なのかどうかなのかはさておき。とりあえず別に断ってもないしこいつからも「振って」としか言われてないんだから「彼女」だと思ったって間違いじゃないだろ?


こんな変な女を彼女でいいのかと頭の中でもう一人の冷静な俺が囁いているけれど。


俺の言葉を聞いた豊海は、さすがに視点が定まらない状態になってふらふらと「あうあうあう」とかわけわからないことを呟きながら相変わらず口と鼻から異物を流し続ける。


人間って色々見慣れるものなんだな。

汚いけどこんな汚い物を直視できてる俺ちょっとすごい。