「で?何で急にお面?」

「だから……」

「何で急にお面被ってまでして、俺の傍にいようとしてるんだってことだよ。死にたくないからっていうだけならもういい加減にしろよ?」


怒ってる。
怒ってるけど……それが、嬉しいと思うのはおかしいのかな。

眉間に皺を寄せて、私の目の前でしゃがみ込む高城に、嬉しさと怒らしてしまった悲しさと自分のバカさ加減とか色んなモノがこみ上げた。


「死にたくないの……」

「あのなあ……だから……」

「高城を残して死にたくないんだもん!」


私の言葉に、高城は眉間の皺を取ってぽかんと口を開けた。

死にたくない。前と同じで、今の幸せがなくなるのは怖い。だけど……それ以上に高城が泣くって言ったから。自慢するって言ったけど、だけど泣くって言ったから。


泣いて欲しくない。
だったら嫌いになって貰えばいいのに、だけどソレも悲しい。

傍にいたい。誰よりも長く。誰も高城の傍には近寄らないほどに傍にいたい。


「泣いてる高城を慰めるのは私でありたい」


ただの独占欲だ。
つまらない独占欲。何も出来ない癖に……だけど譲りたくない思い。


「この世で一番高城のこと好きなのは私なのに」


死ぬほど好きなんて誰にも出来ないじゃない。だったら邪魔しないでよ。私に傍にいさせてよ。


「死なずに高城の死に顔眺めたいよお」

「俺を殺すなアホ」


ぼろぼろとお面の中で涙を流していると、高城がまた私のお面をたたいた。さっきよりも軽く叩いたからか、余り痛みは感じなかった。