そのまま高城はすくっと腰を上げて、さっき飛んで行ったお面を手にして軽く叩いた。

そしてそれを、ぴたっと自分の顔にくっつける。


「何?俺がこれすりゃいいわけ?」

「——ダメ!」


振り返った高城に思わずそう、叫んだ。
だめだめだめ。そんなのだめ。

「……あのなあ」

「だってそんなの付けたら高城の顔が見えない!そんなのイヤ!かっこいい顔が好きなのに見えないとか意味ないし!やだ!」

「お前ほんっとうに俺の顔だけなのかよ」

そういうわけじゃないけど……
だって……。誰か分からない。声を聞いていたって、それでも本当にこれが高城なのかと疑ってしまいそうなんだもん。

信じられないから、高城が私の傍にいること、まだまだ信じられないから。
目に見えるモノまでなくなったら本当に信じられなくなってしまいそうだから。


「俺も同じなんだけど?」

「……え?」

「お前がソレ付けてるってことは俺からお前の顔がみえねえんだよ」


私の顔なんて、見てもしかないじゃん。何処にでもあるような顔だもん。別にかわいくないし、時々口と鼻から変なモノだって出すのに。

なんでそんなもの見たいの。
なんなの高城ってもしかして汚いのが好きな人なの?そういう人だったの?


「お前今絶対俺に失礼な事考えてるだろ」

「……いえ、別に……あ、吐いた方がいいですか?」


その言葉の瞬間、ゴチンとお面でお面を叩かれた。
痛いんですけど……。