致死量カカオ


「ああ、もう起きれたんだ」


とりあえず目の前の女は元気そうだ。

多分今から帰るんだろう。

救急車とかの話はガセだったのか。まあ、さすがに何で倒れたのかわからないけどたいしたことはなかったってことか。


「何で……?」


俺を見上げた女は目を丸くさせて未だ鼻をさすっている。

告白しに来たときも思ったけど結構背が低いな。今までの彼女はもう少し高かった気がするけど。

何で来たのか、って事を聞いているんだろうなあ。

自分でもよくわからない。気になったから、だけどそれもちょっと違うか。うーんと少しだけ考えてから「話があったから?」と返事をした。

彼女の後ろにいる男と女も俺の顔を見ると焦ったような顔を見せた。


……なんだ?


いまいちよくわからない変な感じのする今の状況に再び目の前の女に視線を戻すと、さっきまでは赤くなっていた顔が青くなっていった。


目が見開いて、少し汗もにじんできている。口も半開きで、呼吸の声が聞こえてきそうなほどだ。


「……?まだ体調悪いのかお前」


っていうか明らかに悪いだろ。

なんだよ俺の顔をみてどんどん顔が青ざめていくのは結構気に入らない。


ふるふると体を揺らしてから、ばっと口元を手に押さえて「トイレ!!!!」と叫ぶとついでに、俺の体を跳ね除けるように廊下を走っていった。