「……好きにしろ」


話さない方が良いのかもしれない。
このまま、忘れてしまったほうがいいのかもしれない。


俺がどんなにそばにいようとしたって、それは言わない方が良いのかもしれない。


俺のそばにいたい、その気持ちには……何よりも自分勝手で醜くて最低な思いがこもっているから。


「たか……」


豊海の言葉は聞こえないようにして、何も言わずにくるっと背を向けた。

逃げるように。


これ以上話をしたら言ってしまう。


――じゃあ、死ね。


そう、口にしてしまいそうになる。

めちゃくちゃにしたくなる。それこそ自分の欲望のままに。豊海がどうなっても、それで死んでしまっても良いと思うくらいに。


だから、もう、やめたほうがいい。
豊海のために、という気持ちと同じくらい、自分のためにも。



「――くそっ」


ガンっと廊下にあるゴミ箱を蹴り飛ばして、無性に泣きたくなる気持ちを怒りに変えた。