致死量カカオ



「なにしてんのあいつ」


気がついたらこぼれた一人ごと。
そして反らせない視線。


渡り廊下を通り過ぎようとしたところで、視界に入ってきたのは豊海と、そして知らない男。

見たところ移動教室の帰りだろうか、同じように歩いて行く生徒だっている。

なのになんであいつは男と二人で歩いてるんだよ。


いつもは昭平か千恵子だろ。


見たこともない男は至って普通の短髪の男で、男の方は教科書だって持ってないから単にたまたま通りすがりに話しかけているのか何なのかわかんねえけど。


へらへら笑って豊海に話しかけている。
身長も高くも低くもない、太ってもないしやせてもない。かっこわるいわけでもないしかっこいいわけでもない。

ある意味豊海によく似た雰囲気だ。
すっげえ失礼だっていうことはわかるんだけど。


何が一番嫌かって。


一緒にいる豊海の顔だ。



あの、気分の悪そうな顔が、ムカツク。

なんなんだよ。結局誰にでもなるってことなんじゃねえの?そういうことだろ?

俺と一緒にいるときと大してかわらない顔色に、地面に向けられた視線。


俺と一緒にいるから、だからそうなるんだって言ったのはお前じゃねえか。