致死量カカオ




「結局別れたの?」

「最初から付き合ってねえよ」


朝から相変わらずの質問攻め。
宮木にしてみればおもしろがっているだけなんだろうけど……。

俺からすれば気持ちに気づいたところでどうしようもない現状にげんなりするだけだ。


「でも好きならもう一回話してみれば?」

「それが出来たら苦労しねえよ」


結局、昭平から豊海の連絡先を聞き出すことまで躊躇ってそのまま。

俺の気持ちも何一つまとまらないままだ。
ぐるぐるぐるぐる同じ所を行ったり来たり。

何をすべきなのか何も分からない。
分かるのは。


俺は別れたくないってことくらいだ。


「でもさ、豊海ちゃんのどこが、愛を知らない高城をここまでさせたんだろうなあ」


さあな、と沢田の独り言に心の中で返事をした。

何でなのか、なんて俺が知りたいくらいだ。見かけだって普通で、中身はそれ以上に変だけど。

だけど。


「一緒にいたら面白いなあって思うかな」

「へえ、それも珍しい。まあ、面白いと思うけど」


沢田は意外そうな顔をしてから「すごいもんな」とクスクスと笑う。

自分から一緒にいたいなんて思うことは考えて見れば余りなかったなと思う。