致死量カカオ


「そこまで言ってないよ?それでもいいなら頑張って見たっていいんじゃない?」

「でも、豊海は……」


死にたいはずがない。こんなことで。
そう思うと俺のするべきこともしたいことも見えなくなってくる。


「それは本人に聞かないとわかんないよ。俺豊海じゃねえもん」

「……なんだよそれ」


へらへら笑っているから、釣られるようにがっくりと力が抜ける俺を見て昭平はにやりと笑う。


好きだから触れたい。
好きだから一緒にいたい。

だけどそれ全てが、そもそも俺の存在が、豊海には毒なのかも知れない。

それを望むからこそ、それが辛い。俺も豊海も。


死にたくないから別れる。そう言った豊海のことを考えるとその方がいいと思うキモチもある。

死ぬんだと、言われたって「俺が殺す」なんて考えてもなかった。心のどこかでそんなはず無いと思っていたのかも知れない。

今だって思ってないと言えば嘘になるけど。


どうすればいいのか。どうした方が豊海にとっていいのか。どうしたら、このままスッキリと終わらせることが出来るのか。

終わらせたくない俺の気持ちはどうしたらいいのか。

死んで欲しくないのは俺だって一緒だ。




食べたら美味しいチョコレートは、食べたらいつかはなくなるんだ。

手元に何も残らないまま口の中に甘さが残るだけ。


俺をチョコレートだと言うなら、俺からしてみれば豊海だってチョコレートだ。