致死量カカオ





「――そんなの……」


「もし、自分のせいで本当に豊海が死んだらどうする?」


そんなの関係ない。

そう言いたかった俺の言葉は昭平の言葉によって飲み込まれてしまった。

もしも、本当に死んだら?


好きだから触れたいのに、触れたら死んでしまうかも知れない。



俺が、殺してしまうのかも知れない。



「……でも……」



分かる。
だけど分からない。


自然と足が止まった俺を、昭平と千恵子が振り返って見つめる。まるで俺の言葉を待つように。


だけど、言葉が出てこない。



「豊海が別れた理由は俺の口から言えないけど、だけどそれでもっていうなら……そういうこともあるってこと」

「……やめたほうがいいってことか?」



ぎゅっと唇を噛んでから真っ直ぐに昭平を見つめると、昭平はさっきまでの会話なんか無かったかのようにいつものように飄々とした笑顔を向けた。