致死量カカオ


「とりあえず恋愛したいんだってさ。
まあ、一緒にいるからって好きな訳じゃないからその辺は安心していいんじゃね?」


なんっだそれ。
ち、っと舌をならすと昭平が言葉を続ける。


「今日はまだ、豊海も逃げててまともに話せないだろうし、ってことで。他の男がいる前じゃろくに話も出来ないだろうし」


そんなこと知るか。


「……前も言ったかも知れないけど、豊海あんな体質だから本当に恋愛が出来なくてさ。

無理矢理告白して無理矢理振られて、そのたびにケラケラ笑いながらも泣くんだよね」


少しだけ困ったように笑って、駅の方に向かって歩き始める昭平に、俺も千恵子も一緒に歩き始めた。

急に変わった話に首を傾げつつも、少しだけ真面目そうな口調に俺は何も言わずに言葉を待つ。


「本当に二回くらいは死にかけて。
だから豊海、片思いまでしか知らないんだよ。なのに恋愛はしたい。だけど両思いにはなれない。なると、死ぬかもしれないから。」


まあ、そりゃ死にたくないだろうな。
その気持ちは分かるんだけど……。だけど。


「一生懸命だから応援したいんだけど……どっちがいいのかなあ」

「俺らはどっちも出来ないんだよね。普通さ、相手が死ぬかも知れないなんて嫌でしょ?

彼女がそんなんだったらどうしていいかわからないじゃん。そんな彼女をもてなんて俺にだって言えないし、豊海はそんなこと一番よく分かってるだろうし」


言ってることは分かる。
昭平が俺に伝えようと思っている中身までは分からないけど。