致死量カカオ


「ほら、来たぞ」


ぼけーっとする俺の頭をぽんっと軽く叩いて沢田が俺を呼ぶ。

そのまま顔を上げれば教室のドアには今日の朝に見かけた顔があった。


「んじゃ、帰るわ」

「おーあんまり適当に付き合うなよ?豊美ちゃんがいるならなおさら」


沢田の言葉にふと足が止まる。
……豊海がいるならっていわれてもなあ。


「別れたって言ってるだろ?」


自嘲気味に笑いながら振り返って沢田に言うと、俺の返事が分かっていたのか……沢田はトンと、俺の胸に人差し指を突き刺した。


「ここにはいるんじゃね?」

「うおー!沢田かっこいい!なにそれかっこいい!」


沢田の言葉にぴくりと動いた眉は、宮木のテンションに一気に力を抜いたかのように垂れ下がる。

……お前ほんっと空気を読んでくれ。

騒ぐだけ騒いで「で?どういうこと?何が?」と俺と沢田を交互に見つめている。


「お前は分からなくていいよ」


騒がしい宮木の頭をぐいっと沢田の方に押してから再び女の方へと進む。

宮木に意味を教えたらクラスのど真ん中で想像出来ないようなことを叫び出すからな、絶対。


下手したら豊海とセックスしたのかとか言い出しそうだ。
してたら別れてねえよ。


……したら。
その前にベッドが血の海になるだろうな。


くくっと笑い後こみ上げて、隣の女の視線に思わずこほんと咳払いをした。