致死量カカオ


「……で、体調は?」


靴箱までの廊下を歩きながら、少しだけ後ろを歩く豊海を振り返ると豊海は泣き出しそうに眉を下げて俺を見上げた。


「……大丈夫、じゃないです」

「何が原因で?」


この質問は意地が悪いだろうか。

そう思いながら口にすると、豊海は俯く顔からきゅっと閉じる唇だけを俺に見せた。


何が原因か。

それが俺なら別に構わないけど……やっぱり何か別にあるんじゃねえの?

今までのこいつならきっと死にそうになりながらも「好き過ぎて」とか平気で言いそう。

……自分で言うのもなんですけど。


見つめていたって口を固く閉じたまま話し始める素振りもない豊海に諦めてポケットから携帯電話を取り出す。


「豊海とりあえずお前、携帯教えろよ」

「――……え?」


俺の言葉に反応して顔を上げた豊海は、ほんの少しだけいつもみたいな顔に見える。

……ほんっと、よくわかんねえ。


「え?あ、でも、え?」

「とりあえずはい、携帯」


言っている意味は分からないけど、聞いても無駄そうだ。そう思ってすっと手を差し出した。