致死量カカオ




放課後になれば案の定、豊海は颯爽と教室を後にしようとしていた。

していただけで結局はHRをサボって豊海のクラスの前で待っていた俺に捕まったのだけれど。


……あそこまで言ったって言うのに帰ろうとするとはいい度胸じゃねえか……。


鞄を手にしたまま俺を見て固まる豊海に、背後で千恵子が苦笑い、そして昭平が「ほら」と口にした。


「おら、帰るぞ」

「……でも」


でもじゃねえよ。
そう言いそうになる言葉をぐっと堪えて、豊海の言葉は聞こえないふりをして背を向けた。

……何でこうも当たり散らしたくなるんだろう。

それが豊海にとって仕方ないことだって言うのは俺は分かって付き合ったはずなのに。

確かに裕子の売り言葉に買い言葉的な部分もないとはいえないけど。だけどこうして一緒にいようと思うのは俺の意志に違いないのに。


ちらっと背後を見れば、千恵子と昭平が豊海を無理矢理のように俺の方へと送ってやっていた。


変な女。

俺だって男だし、女を泣かせたいとかそんな気持ちは微塵もない。

喧嘩して怒っている女に大してだってそんなこと思わないのに……。


豊海には寧ろ言いたいこと言いたくなる。


泣いたらきっとどうして良いか分からなくなるけど泣かせたくもなるし、困らせたいし、俺のことで死にそうになってるのも正直ちょっとは嬉しい。


……そんなことしたからって何が満たされるのかわからねえけど。