「……?まだ体調悪いのかお前」


またさっきと同じように腰を折って私を覗き込む彼の視線と私の朦朧となった視線がぶつかった。

胸から何かが沸き上がる。

むくむくと大きくなる。口の中がカラカラで、でもねばっこくて。

心配されているという嬉しさ。
会いに来てくれた嬉しさ。
目が合う嬉しさ。


……どれも、毒だ。


「トイレ!!!!」


ぐっとこみ上げるものを必死に口を手で押さえてそのまま高城を突き飛ばすようにトイレに走った。


ぎゃー!死ぬー!


背後を気にすることもなくばったばたと急いで廊下の端にあるトイレに駆け込むと、一気に吐瀉物を便器に流し込んだ。


口の中が気持ち悪い。

さっき食べたチョコレートも出てしまったじゃないかと肩を落としている余裕もない。


肩を上下に揺らしながら息をして、汚れた口元を目の前にあるトイレットペーパーで拭った。


「……まずいぞ豊海……死ぬぞお前」


独り言。

まるで他人事のように言わないと冷静に考えられない。


壊すつもりの告白。もしやこれは、悪化しただけじゃなかろうか。


目の前がチカチカして、まるでおばあちゃんの姿が見えるみたいだ。
おばあちゃん生きてるけど。