致死量カカオ


自分が、このまま気を遣って行けるのかどうか。それだけに不安を感じるって言うのもイマイチ自分で理解出来ないけど。


昼間の時も感じたけど。

本当に大丈夫かよあいつ。


何か。そんなにあいつのこともあいつの症状も知っている訳じゃねえけど。だけど……。


なんか変な感じだ。


とりあえずバスを見つめていると、窓際に座った豊海と目が合った。

軽く手を上げて「じゃあな」と体で告げると、豊海は泣きそうな表情を作ってからぺこりと小さく頭を下げるだけだった。


……シャツはさっきよりも赤黒く染まってる。

多分血が乾いてきたんだろう。

無事に家に帰り着ければいいけど大丈夫か?


本人が大丈夫だと言ってるからごり押しで送るわけにはいかないんだけど……。


すぐさま視線を逸らして豊海を見ているとこのままバスに乗り込んでいきそうな程に苛立つ自分を抑えるためにも、俺も直ぐにバスに背を向けてすぐ傍の駅の改札に向かった。


仕方ないんだと何度言い聞かせればいいだろう。

そんな言葉が自分の自制心の元になるなんて思いも寄らなかった。


自分の気持ちも分からなければあいつの気持ちも分からない。言葉では知っていたって態度ではどうしても理解出来ないんだから。