「もうやるよ。返さなくていいよ」
今日返した高城のシャツ。
「好きなだけ抱きしめて匂い嗅げば?血の鉄っぽい匂いしかもうしねえだろーけど」
こんな風に、優しくて話しやすくて、そしてこんなにもよく笑う人だなんて、数日前の私は知らなかった。
嬉しい誤算。
だけど苦しい誤算。
知らなかっただけで、高城はきっとずっとこんな人だったんだ。私がただ、遠くから見てるだけだったから知らなかっただけ。
知れた嬉しさと、もちろん息苦しさ。
そして知らなかった悔しさと、誰かは知ってるんだという悔しさ。
いや、でもとりあえず……。
この高城のシャツを私にくれると……!?まじか!サイン入れて欲しい……。そのサインにキスして毎日寝るよ!
「そーいやお前、頭悪いんだって?」
「ふあい!?」
鼻をつまんでいるからか、変な声が思わず出て高城はまた笑顔を見せた。
そんなに心臓に悪い笑顔を見せないでーでも見せて!
「今日科学と数学の先生がお前に勉強教えてくれって。お前職員室でも話題らしいぞ」



