「――あ」
「ん?」
校門を出たところで鞄の中に入れてあった紙袋の存在を思い出して慌てて立ち止まった。
昨日倒れた景色が私に記憶を蘇らせてくれたのか。
出来たら一生忘れたままにして記憶抹消したかったけれど。
「昨日、ごめん、なさい」
おずおずと差し出した紙袋。
高城の方を上目遣いで見つめながら様子をうかがうと、何の事か分かっていないのか首を傾げながら紙袋を手にした。
「あの、送ってくれて、ありがとう」
なにこの台詞!
自分の台詞に何かわかんないけどこのトキメキは何だろうか!
送ってくれてありがとうとか!
そんな台詞を口にする日が来るとは思わなかったんですけど……!しかも高城に!
「ああ、昨日ぶっ倒れたこと?」
口に出さないで下さい。
これでも恋する乙女なんです。
「まあ、生きてて良かったな」
「冗談にならない……」
「まあそりゃそうか。で?これがお詫び?」
紙袋をがさがさと鳴らしながら、高城が苦笑を零しながら取り出したのは……。
しわくちゃの、シャツ。



