致死量カカオ


……めんどくさいなら私なんか捨てちゃえばいいのに。なんて思うけれどそれもそれで多分苦しいだろうなあ。


先を歩き始める高城の後ろについて廊下を歩き出した。


気持ち悪いとか死ぬかも知れないとか、そんなこと分かっているのに私は高城の傍を自分から離れられないんだ。


廊下を歩いていると、窓には先を歩く高城と、その高城か五歩ほど後ろを歩く私の姿が映し出される。

……一緒に並んでいてここまで不自然な相手がいるだろうかと思わずにはいられない。


高城の傍に私は似合わないし。
私の傍にも高城は似合わない。


そんなの分かっていたことなのに何を今更!そんなこと考えてたって仕方がないって言うのに!


ぶんぶんと頭を左右に大きく振って自分の意味の分からない悩みとか思いを捨て去った。


あ、何かくらくらする。
勢いよく頭を振りすぎたか……。


「……なにやってんのお前」

「ちょっと、風興し……?」

「ふはっ……意味わかんねえよ」


高城は怪訝そうに振り返ると、私の自分でも意味の分からない言葉に吹き出した様に笑った。

はい、イエローカード一枚。
二枚目で退場ね退場。退場するのはおそらく私の意識なんですけどー。


笑顔を見るたびに胸からきゅうーっと音が鳴る。

絞られたその心臓から一気に血が噴き出してくるみたいに全身が真っ赤に染まるのが自分で分かる。