致死量カカオ


「並んでるなら俺のも買っといて。俺紅茶」

「仕方ないなあ」


めんどくさそうな顔をしている裕子を通り過ぎて、まだ少し混んでいる購買の中に足を踏み入れた。

さすがにパンの品揃えはよくないけど、その中から適当にのパンを手にしてレジでおばちゃんにお金を支払う。


「一つでいいの?小食ねー」

「弁当があるんだよ」


タイミング良くジュースを手にした裕子がやってきて受け取ると、俺のパンを見て呟く。

その裕子の後ろに、見覚えのある普通の女の横顔が見えた。


「高城?」


そのまま裕子を通り過ぎて、後ろの女――豊海の傍に近づく。

さっきの祐子と同じように自販機の前で、隣に千恵子という女も連れて並んでいる豊海。

まだ顔色良くない気がするけど大丈夫かあいつ……。


顔色がいいところ何か一度も見てないからアレが標準かも知れないけど。


近づく途中で、豊海が俺の方に顔を向けて視線がぶつかった途端……。びしっと固まる音が聞こえたような気がした。


……感じ悪いよな。マジで。それが仕方ないこととはいえ結構いらっとするのは俺だって仕方ない。


「よ」

「……ど、も」


軽く手を上げて挨拶を口に知ると一瞬きょろきょろとしてから目を伏せて返事をする。