致死量カカオ


「毒されてきたかな……」


その言葉が、自分を言い聞かせるような意味しかないってことももうわかっている。

だけど口に出してふうっと細く長い息を吐き出してから歩き出した。

まさか、本気で?出会って三日目で?そんな思いに気付かない訳じゃないけれど、認めるにはさすがにあいつは変だから。


ぽりぽりと、気恥ずかしさから一人頭を掻いて教室に戻る。

教室に戻るついでに昼飯に購買でパンでも買おうか。そう思って普通コースと理系コースの校舎の境目にある購買に向かって歩いた。

この時間ならろくなパンは残ってないだろうけど。弁当はあるしおやつ程度に一つ手に入ればそれでいい。


「あれ?裕子?」

「あー高城。何?珍しい方向から歩いて来るね」


購買近くの自販機に並ぶ裕子の姿に声を掛けると、少し驚いた表情をして裕子が振り返った。

普通コースの方の校舎から俺が一人で歩いて来るなんて確かに珍しいからな。


「何?彼女に会いに?」

「ちっげーよ。先生の荷物運んだだけ」

「なにそれ。いつからそんな優等生になったの」


くすくすと笑う裕子に「うるせ」と小さく文句を告げてからポケットの100円を手渡した。