胸を締め付けられるような苦しさがなくなったかわりに、胸から広がるのは黒い何か。


どろどろに溶けた真っ黒のチョコレートみたいなやつ。


洗ったってとれそうもないほどにどろどろしてるだろう。


「……気持ち悪いから……保健室で薬貰う……」


小さく呟いて、すぐさま踵を返して学校に向かった。


背後で「豊海?」と呼ぶ高城の声が聞こえたけれど……嬉しい気持ちは確かに抱くのに、そんな気持ちも黒いチョコレートが覆い被さるようにして隠していく。


何この苦しさ。

ぎゅうっと服を掴んで気持ち悪い胸焼けを我慢しながら学校をひたすら目指した。


気持ち悪い。

チョコレートの食べ過ぎで胃が気持ち悪い時みたいだ。


吐いてしまいたい。

吐き気はそんなにないけど気持ち悪すぎて耐えられない。これこそ「死んだ方がマシ」なくらい。


体の中を占めるこの黒いビターチョコレートを全部吐き出してなくしてしまいたい。


一緒に必要な物まで出したっていい。
この気持ち悪さがなくなるなら。