致死量カカオ


「ま、元気みたいだし帰るかー」

「はいはい」


はあっとため息を漏らしながらいつも通りの昭平に手を振った。しっしっと早く帰れと告げるように手を上下に。


心配して来てくれたのだろうことは分かってるけど。

きっと千恵子も心配してて、千恵子に様子を見てきてとでも言われたのかも知れない。

自分たちのせいで、とか余計なことを想っているかも知れない。

自分でそうさっき昭平に口走ったけれど別にそんなこと思ってないよ。


「豊海、俺も千恵子も、お前が誰かを好きなら応援するし、お前がやめるなら別にそれを止めたりもしないよ。

自分で決めたことを好きにすればいい」


昭平はそのまま「じゃーな、また明日—」とドアを閉めた。


どうしたらいいか、その答えを上げるとするならば「やめておけ」だ。少なくとも告白したときはそう思っていた。

一人やめよう!と決断を下して実行に移せる程には自分の心は自分じゃどうにもならないから、「どうにか終わらせて」と人に、高城に押しつけたのも事実。


でもそうでもしないと切り離せない。

そうでもして、こんな思いを捨てないといけないから。


――じゃ、付き合う?


高城の後の時の言葉に、顔を思い出して胸がぎゅうーっと締め付けられた。


したいこととしなくちゃいけないことが一致しない。


手にしたままだった高城のシャツをぎゅうと握りしめて苦しさを紛らわすように抱きしめた。


これが今の苦しさを悪化させていることもわかってるけど……。本人に抱きしめられることも、本人にこうやって抱きつくことだって出来ないんだから。

このくらいはさせて欲しい。
高城の匂いなんか流されて洗剤の匂いしかしない高城のシャツ。

私が踏み込めるのはせいぜいこのくらいだ。