無意識に暗い顔になったあたしに真奈美はクスリと笑った。



「兄貴が記憶を取り戻した時のことを考えてびびってるの?」


「当たり前じゃん。二度とあんな目に遭いたくないし!」



それに聡明な人だから。記憶を無くしたフリをして、またあたしに近づいてくる可能性もある。不安で毎日が怖い。



「知ってる? 記憶喪失の人に絶対にしちゃいけないこと」


「え?」


「新しい記憶を植え付けること」



新しい……記憶?