「かけないならあたしがかけるよ?」
「……分かったよ」
一段と顔色が悪い。緊張している時の虎太だ。ハンズフリーにして、あたしにも真奈美の声が聞こえるようにしてかけさせた。
コール音が響く部屋。何故かあたしもドキドキした。3コール目で、かわいらしい声が聞こえてきた。
『もしもし』
「あ、俺。今、大丈夫?」
『うん。虎太くんのほうは大丈夫なの? 親戚の法事があるから電話もメールもできないって言ってたのに』
チッ。こいつ、真奈美にも嘘ついてる。彼女のあたしと会う時間帯に電話とメールをしてこないように仕組んでたんだ。
てことは
――二股?


