＊　＊　＊

　ジアの朝は早い。小さな農村であるジェリーズの治安維持隊に属しているからだ。

「ミア！おはよっ！」
「にゃあ…。」

　ミアと呼ばれるその猫はとても細身で美しい銀の毛を持つ。つやつやと輝くその毛並みは他の家猫にも類を見ないほどだ。右目が銀色、そして左目には金色を宿している。レザーの首輪に、淡く光る水色の石がはめ込まれた指輪が通されている。ジアはそっとミアの頭を撫でた。

「あたしは今日も訓練だから…クロハのところでお留守番お願いね？」
「みゃあ、にゃん。」
「…分かってる。ちゃんと気を付けるよ。行こう。」

　ミアがジアの足元にすっと寄り添った。そしてそのまま、歩行スピードに合わせて歩き出す。向かう先は通い慣れた隣の家。

「クロハー！」

　ジアは薬屋『ローシュ』の前で叫んだ。