それは別に何かに気付いた訳じゃなかった。
だけど身体が勝手に動く。
立ちあがり、初めて見る服に近寄って。
「……これ」
洋服のタグ。
そこにはブランド名が書かれていて。
その名前は知ってる。
聞いた事のある名前。
「どうした?」
「えっ、あっ」
急に声をかけられてびっくりした拍子に、手にしていた服がハンガーごと床に落ちた。
慌てて拾い上げるけど、服を持つ手が震えている。
これって。
元カノの……
「大丈夫?怪我しなかった?」
さりげなくハンガーを受け取ってくれたシュウさんは、怪訝な顔をした。
触れた手がガシっと私の手首を掴む。

