――――相手を知る…… そんな風に考えたことがなかった。 「ケイちゃんの話を聞いてて思ったんだけど、ケイちゃんって自分の気持ちを相手に打ち明けた事ある?」 「……え?」 「これだけ苦しいって相手に伝えた事ある?」 その問いかける声がさっきよりも優しくて。 何度も撫でてくれる手が暖かくて。 視界がまたぼやける。 キュッと目を閉じて。 両手を握って。 そして…… 正直に小さく首を振った。 先輩の手は相変わらず暖かくて。 今はそれに救われている気がする。