「…なるほど」
波瑠だけが分かったように頷く。
ユウと薫は荒々しく呼吸をしながら、
奈央の方を見ている。

「てめぇ…」
利津は怒りを秘めた瞳でナジカを見る。
オドオドしながらも話すナジカ。

「いやーすいませんね。呉羽のために
働くって条件だったんですけど、やっぱ
無理です。こっちの方が面白そうですもの」
得意げに笑ってみせるナジカ。
利津は何とか感情を抑えていた。

「あんたは何をする気ですか」
波瑠が口を挟む。

「呉羽の連中、嫌いなんだよ。
ごたごたに潰してやる。覚悟しろ」
「何で…」
はっと薫は奈央を見た。
目を開いたままナジカを見ている。
そして、その方向へ歩き出した。

首をかしげる奈央。
ナジカの目の前に立ち、彼女を
無表情のまま見つめる。

「宮崎…」
その表情は、言葉に出来ないほど
怒り、悲しみ、苦しみ、憎悪、憎しみ
…全てが詰まっている。
「あんたが全部壊したんだ…」
奈央は黙ってナジカの胸倉を掴む。
そして首を絞めようとした。

「やめろ」
利津の声が響いた。

「そんな事しても直は喜ばねぇよ」
「…」
表情は変えずに、手だけを離す。
その作業は強引で、苛立ちを隠せない
みたいだった。