俺は憂紀を手招きする。

起き上がり、向かい合うように座らせる。

「よいしょ…」と、座った憂紀の表情はまだ戻らない。



「俺は、憂紀だけしか見てない」



「うん…」



「ただ、夕姫の事が片付いて、“ここにはもう居る必要はない”んじゃないかって思った」



「……」



憂紀は俯き、俺から目を逸らした。

仕方ない事なのに、辛いかもな。

結婚もしてないし。

親の力が不可欠なのに、勝手な事は出来ない。

これ以上、おじさんやおばさんに迷惑を掛けるのもダメだ。



「近いうち、帰る」



「…わかった…」



泣きそうな憂紀。

俺はそっと、キスをした。