「ママが聴こえなかったんだね。ごめん」



母親は私の隣に座り、顔を覗き込んで来る。

19歳で、一児の母となった時、どんな気持ちだったんだろう。

でも、立派な父親がいたから、心強かったよね。



「愛斗に連絡してくれる?今日は琉聖君も来るから」



「わかった」



兄貴は最近、反抗期なのか恥ずかしいのか、母親と話したりするのを嫌がる。

メールをしても、従うけど返信はないんだ。

≪琉聖が来るらしいから帰って来て≫

≪了解≫

事務的なメールを交わし、私はピンポーンと呼び鈴が聴こえて玄関に行く。

母親は洗い物をしていて、聴こえてないっぽいし。