「…郁、おはよう」

ことりは笑顔で挨拶すると郁が おはよう とそっけなく返事をした。

やっぱり、様子が可笑しい。

「あの、郁「暫く休むんじゃなかったのか?」

郁はため息まじりに問い掛けると、ことりは言葉を詰まらせる。

そういえば、そういう設定だった。

「今日は仕事なかったから。」

「…そうか。」

「あ…俺の席、何処かわかる?」

「は?俺の隣だろう」

忘れたのか?と不思議そうな表情をする郁に、ことりはごまかすように笑みを浮かべる。

「あ、あーそうだった!」
「…。」

郁は小さくため息をつくと、一限目の用意をしだした。

ことりは郁の隣に鞄をおろしてから椅子に座る。

「…俺、郁に何かした?」
この曖昧な関係をはっきりさせたくて問い掛けたのだが、彼はわざとらしく深いため息をついた。

ますます意味がわからない。

「…郁、」

「陽。」

彼は真っ直ぐと自分を見て、名を呼んだ。

「な、何?」

「正直に言う。」

「う、うん」

なんだろう。緊張感が胸を締め付ける。

呆れたような表情をする郁の感情が読めない。


「…ムカつく。」


そう、一言告げた。

ことりは目を見開き、動きを止める。

え?今、なんて?

郁は直ぐにことりから視線を逸らした。