それからもダンスレッスンは続いたが、ことりだけ上達していない。

無理もなかった。体がついていかないのだ。

一人泣きそうになり、瞳を潤ませる。


「森山。」

七瀬が低い声音で彼の名を呼んだ。

「今日は帰りなさい。」

「え、」

ことりは驚いて顔をあげた。

どうして、帰れと言われなければいけないんだろう。

自分は何か間違ったことをしただろうか?

「調子が悪いのに、無理にレッスンしても意味ないでしょ。

今日の森山はダンスのキレが悪すぎよ。今日は帰って。調子が戻ったら自主練しなさい。」

「...ハイ。」

ことりは小さく返事をした。

どうやら、いつものようなダンスではない為に調子が

悪いのだと勘違いされてしまったらしい。

メンバーも、陽の調子が悪いということに気づいていたがあえて何も言わなかった。

ふらふらとした足取りで自分の荷物をまとめ、肩に担ぐ。


「...奥村ー。」

そんなことりを見かねてか、七瀬は練習している楓に声をかけた。

「はい。」

「送っていってやりなさい。」

「え、」

なんで僕が、と声を濁らせたが七瀬はもう一度力強く同じことを言った。

「奥村も、今日はそのまま帰りなさい。

同じパートの森山がいないなら練習にならないでしょ。」

たしかに、七瀬が言うとおりだ。

楓はハァとため息をついてから荷物をまとめてことりの後を追う。

「行くよ。」

「ご、ゴメン...。」

「別に。...お疲れ様でしたー。」

「お、お疲れ様でした!」

楓につられて、ことりも挨拶をする。

メンバーが茫然とこちらを見ている中、二人は練習場を後にした。