男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



ことりは困惑した。

昨日は自分が陽の代わりに男装して生活していた。

なのにどうして彩乃が 陽とホテルに行った と言うのかが分からない。

「...そ、なんだ。」

嘘でしょ?とは聞けなかった。

どこか思いつめるような表情で、発言を否定させないような雰囲気に思わず躊躇う。

「まさか、撮られてたなんて思ってなかった....。」

私、陽君のファンに殺されちゃうかも。とおどけて話す彼女は

嘘をついているようには見えない。

まさか、意識不明だった兄が目を覚まし、彩乃と一緒にいたのか?

否、それはない。

だって、自分が見舞いに行ったときはピクリとも動かず、眠っていた。



「まあ、そういうことなの。

...私、陽君が好きだから...ごめんなさい、森山先輩。」

先輩のお兄さん取っちゃうような真似して、ゴメン。

素直に謝る彼女に、ことりは慌てて口を開いた。

「あ、謝らなくていいよ!

お兄ちゃんが誰と居たかなんて、私と関係ないし...

それに、奥村さんなら...いいと、思う。」

何適当なことを口走ってるんだろう、と自分でも後悔した。

その言葉を聞いた彩乃は嬉しそうに微笑み、 ありがとう と言う。



♪~♪~、

ふいに、陽の仕事用の携帯に着信が鳴った。

それを取り出し、画面を見て焦る。

 奥村 楓 からだ。

彩乃がいる前で電話をでる事もできず、あたふたしていると不思議そうな顔

をされた。

「電話、出ないの?」

「え、ああ、うん!ちょ、ちょっと電話でてくるね。」

ことりは立ち上がると、彩乃から離れる。

なるべく人のいないところに移動すると電話に出た。

男装しているときのように、少し声音を低くして話す。

「もしもし。」

『今日、学校に居ないんだね。』

「え、あ、うん...暫く、学校休むことになったから。」

昨日木村に言われたことを思いだし、そう説明すると不満そうな声が聞こえた。