男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-




「実はね、あたしのお兄ちゃんもスカイのメンバーなんだ...

あ、これ内緒にしてね。」

「うん...って、ええええ!?」

「森山先輩!声でかいよ!」

彩乃は慌ててことりの口を手で塞ぐ。

「モデルになったのは、自分の実力なのに...

兄のおかげでなれたって、思われたくないから

オーディションの時から、ずっとまわりにはスカイにお兄ちゃんがいるってこと

秘密にしてるの。」

「そ、そうなんだ...。」

ことりは驚いて目を見開く。

誰かに似ているとずっと思っていたが、そうだったんだ。

(か、楓君に似てる...。)

子供っぽい、人懐っこい可愛い笑顔がそっくりだと思った。

「なんか、森山先輩とは仲良くなれそうだし、よろしくね!」

「うん、宜しく。」

ことりは彩乃につられて笑う。

そのまま、一緒に登校することになった。

玄関で彩乃と別れ、一人教室へ向かう。


ガラ、

教室のドアを開けたとたん、数人のクラスメイトが駆け寄ってきた。

「森山さん!」

「っ!」

驚いて目を見開けば、女子生徒は更に詰め寄る。

「1年のモデルの、奥村彩乃と登校してきたでしょ!?」

「えっ、う、うん。」

「聞いてほしいことがあるんだけど。」

有無言わせない、圧力のある言い方でことりを脅した。

「な、何...。」

言葉に詰まりながらも必死に答えると、女子生徒はバッと新聞を突き出してきた。

「?」

「これが本当か、聞いてきてよ。」

「っ!」

今日の新聞の一面を大きく飾っていたのは、まぎれもない陽と彩乃の姿だった。

内容は、昨日の午後7時にモデルの彩乃とスカイの陽が

ホテルに向かうところを目撃した、というものだった。

身に覚えのないことりは否定しようと口を開くが、

それより先に女子生徒が言葉を発した。

「今すぐ行ってきて。」