男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



「行ってきます!」

目の下にできてしまったクマを気にしつつ、

ことりは家を出た。

頭の中はダンスの事ばかり。

昨日覚えたステップとダンスを忘れないように、

何度も思い出す。


「あ、森山先輩!」

「?」

突然声をかけられ振り向けば、

同じ制服をきた女子生徒がいた。

「な、何?」

普段学校であまり声をかけられない為に戸惑いながら

返事をすると、彼女は嬉しそうに笑った。


「昨日、学校で撮影してたよね。」

「え、どういうこと?」

「あなたの双子のお兄さん。あたし見たよ!」

「あ、そうなんだ...。」

ことりは驚きつつ、彼女を見る。

「私、高1の奥村彩乃。

よかったら、友達にならない?」

(...奥村?)

聞いたことある苗字に、少し考える。

「...いきなり友達って言われても。」

困ったような表情を見せると、彩乃は残念そうな表情を見せた。

「私...モデルしてるから、あんまり学校にこれなくて...

友達少なくて...。だから、森山先輩と友達になれたらいいなって

思ったんだけど...。」

やっぱり、急には無理だよね。と寂しそうな顔をした。

なんだか自分が悪いことをしているような気がして、

ことりは慌てて訂正した。

「わ、私でよかったら!是非!」

「わあ、本当!?」

ありがとうっ!と彩乃はことりの両手を掴んだ。

「アドレス教えてくれない?」

「あ、うん。」

携帯を取り出し、赤外線通信をして連絡先を交換する。

彩乃は長い髪を耳にかけるしぐさを見せて、

交換が終わるとにっこり笑った。

(...誰かに、似てるような)