郁は綺麗に微笑むと、ことりの頬から手を離す。
「何かあったら相談しろよ。」
「うん、ありがとう郁。」
「....。」
ことりが微笑めば、郁はじっと彼女を見る。
「な、なんだよ...。」
「お前、本当に陽か?」
「え?」
ドキン、先ほどとは違う緊張感がことりを襲った。
(ば、バレてる...?)
「な、何言ってんだよ。陽に決まってるだろ。」
「そう、だよな。」
いつもと違う陽の雰囲気に戸惑う。
いつもとは少し違う、甘い香りと少し子供っぽい
女の子のような表情にドキドキした。
「郁?」
陽の色っぽい唇に、無意識に視線が向いてしまう。
「~っ///」
陽の事を 可愛い、と思ってしまった。
「俺、この後南達と練習するから...
もう行くよ。」
「あ、うん。」
「分かってると思うけど、お前も楓と練習しろよ。」
「わ、分かってるよ!」
「じゃあ、また明日な。」
早口で郁は告げると、ことりを一人残して走っていってしまう。
「...。」
途中、郁の様子が少し可笑しかった気がしたが仲直りできてよかったと思った。
自然と頬が緩む。
「あ、そうだ。」
気はのらないが、楓と練習しなければいけないんだった。
でも、練習する前に自分は基本的なダンスも踊れない。
まずは自分ひとりで自主練習した方がいいと考え、
参考書を買おうと近くの本屋に向かった。