男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-




「あれ、郁から電話だ。」

陽が電話に出てるのを気にしながら、テーブルに夕飯を並べる。

「え?ことり?」

自分の名前が出たことに、反応を見せれば陽が自分に携帯を差し出してくる。

「話したいことがあるんだってさ。」

「...。」

少しだけ震える手で携帯を受け取った。


「...もしもし。」


そっと耳に当てて声を出せば、前と変わらない郁の声が聞える。

『記憶、戻って良かった。』

「うん...心配してくれてありがとう。」


『俺、お前の事あきらめないから。』


突然告げられた言葉に驚いた。

なんて返事をすればいいのかわからず悩んでいると、郁は話を続ける。


『今日、楓から聞いた。

...でも、俺の気持ちは変わらない。』

「郁...。」


『ことりが好きだ。だから、ずっと待ってる。』

「...有難う。」


ぽつり、と一言礼を言った。

郁も好きだ。けれど、楓を想う気持ちとは違うと今でははっきりとわかる。

私は彼に憧れていた、輝いて見えた。

それは今でも変わらない。

郁だけじゃなく、「スカイ」は自分にとって特別なモノなんだ。



「ごめんね、郁。」

『...謝るなよ。』

郁の声が少しだけ震えていた。

それに気づかないふりをして、うん と言えば郁は静かに声を発した。


『...明後日の朝、7時。テレビ見てて。』

「...それ、今日だけで3回言われた。」

そう言うと、電話の向こうで郁が笑った。