「あ、もうすぐスカイのコンサートですよね!」
「そうだね。」
突然ポケットから何かを取り出してことりの前を遮るように前に出た。
「そんなことり先輩に、お兄ちゃんからプレゼントです!」
「え?」
ばっと出されたのはコンサートチケット。
驚いて目を見開けば、彩乃は一緒に行きましょう!と言った。
「しかも、最前列なんですよ。」
「ほ、ほんとに!?」
「本当です。お兄ちゃん、このチケット取る為にマネージャーさんに頼んでましたから。
あたしがコンサート行きたいって言ったときは自分で取れって言ってたクセに、
ことり先輩の名前だしたとたん動くんだから。」
ことりの頬が赤く染まった。
素直に、嬉しい。
本当はコンサートに行きたいと思っていたが、最近忙しくて帰宅が遅い兄に頼むのは
気が引けた為になかなか言い出せなかったのだ。
「何から何まで有難う!彩乃ちゃん!」
勢いよく彩乃の手を両手で握ると、彩乃は陽と似ている顔を見て
頬を少しだけ赤く染めて、 いえ、そんな、 と言葉を濁した。
♪~、♪~
携帯が鳴り、見れば楓からの電話だった。
「あたしに気にせずでてください。」
彩乃にそう言われた為に通話ボタンを押した。
向こうからは忙しそうな声と雑音が聞こえる。
『元気?』
「うん。そっちは、今電話しても大丈夫なの?」
彩乃は、ことりがまさか自分の兄と電話しているなんて思っていない。
特に気にせず歩みを進める。