救急車に乗った二人は、隊員の手によって素早く手当されていくことりを見て
ぐ、と拳を握りしめる。
陽はハッとすると携帯を取り出して母親に電話をかけて事情を説明する。
そうしている間に会場から一番近い病院に到着した。
何も状況を説明されぬまま、
ことりは救急車を降ろされるとレントゲン室へと入っていく。
緊張感が胸を締め付ける。
「...郁、ことりは大丈夫だよ。」
「...。」
陽が気を聞かせて声をかけたが、郁の耳には何も入ってこない。
レントゲン室から出てくると、ことりはすぐに手術室に運ばれていった。
嫌な予感しかしない。
郁は無言で手術室の前にある椅子に座ると、ことりがでてくるのを待った。
*
手術中の赤いランプが消え、中から医者が出てきた。
陽と郁は駆け寄る。
「ことりは、大丈夫なんですか!?」
「命に別状はないが、目を覚ましてみないと分からない。」
「...どういう、事ですか。」
「脳の一部に強い衝撃を受けたらしくてね、
もしかしたら体のどこかに障害がでるかもしれない。」


