男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-




「ことりっ!ことり!」

陽は駆け寄り、ぐったりしていることりの体を抱き起す。

スタッフ達は慌てて駆け寄り、ことりの容体を見て顔を青くした。

すぐさま救急車を呼ぶ。


「照明のセッティングしたの、誰?」


楓が低い声音で問いかけた。

スタッフが更に顔色を悪くさせる。

「誰だって、聞いてんだけど。」

「...楓、やめろ。」

柚希が彼の肩を掴んで止めれば、陽に抱き起されていることりに視線をうつした。

ぱっと見た所外傷はそれほど酷くないが、心配だ。

機材が割れて飛び散った破片が頬に掠れたのか、ことりの頬から血が流れている。

思わず表情を歪めた。


暫くすると救急隊員が会場内に入ってきた。

担架に乗せられ、運ばれていく。

「俺も一緒に行きます。」

陽がそう言えば、救急隊員は頷く。

「俺も、一緒に行っていいか。」

「郁...。」

真剣な表情の彼に頷く。

救急隊員は では、こちらへ。 と案内を始めた。

「ごめん、ちょっと行ってくる。」

残されたメンバーに告げると、小走りで後を追う。


「...ことり先輩、大丈夫かな...。」

彩乃の心配そうな声を聴き、楓は先ほどよりも更に表情を険しくさせた。