男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-





昼休みが終わり、午後の授業が始まった。

ぼうっとしているとあっという間に時間は過ぎていく。

たまに、隣の席の郁から視線を感じたが気づかないふりをしていた。

どうやら自分が思っていた以上にことりがメンバーに与えた影響は大きいようだ。




あっという間に放課後になり、生徒達は下校していく。

「陽、レッスン行こう。」

「あ、先に行ってて。楓と話があるから。」

「...分かった。」

郁は頷くと、先に教室を出ていく。

丁度入れ違いになるかのように、楓が教室に入ってきた。


気づけば二人以外、生徒達は教室から居なくなっていて

楓は口を開く。


「で、話って?」


「...朝、ことりからメールがあって、楓の妹から泊まりに来ないかって

誘われたみたいなんだ。それで、俺も来ないかって言われて...

悩んでて、さ。」


「僕は、どっちでもいいけど。」


「昨日の事もあるし、良いのかなって思って。」

「気にしなくていいんじゃないの。陽君は本当のスカイのメンバーなんだし...」

「楓...」

「ことりが傍に居たらって、考えるときもあるけどそれは僕の我儘だしね。

僕は僕なりに、頑張るよ。だから陽君も、新曲のダンスとか早く覚えてよ。

僕と同じパートなんだからさ。」


楓は陽に視線をあわせると、にっこりと笑った。