はぐれ雲。

頬を伝って、林の手がゆっくりと彼女の細い首に巻きついた。

「……!」

彼女の目が一瞬にして血走った。

必死に首を絞める手を振り払おうとするが、それに反するように首は音を立てて圧迫されていく。

「悪いな、このことをペラペラ喋られたら、こっちもたまんねぇんだよ。おしゃべりさんだからな、おまえは。ただでさえ捜査一課が俺を狙ってるんだ。邪魔になるものは、全て消す」

真梨子は手足を力の限り、ばたつかせた。

次第にそれも弱くなる。

林はさらに手に力を入れた。

彼女は金魚のように口をパクパクと動かした。

<こんなはずじゃなかった。こんな…>

必死に手を伸ばす。

何かにしがみつくように。

「…た……けて…」

しかし最後に右手が空をつかむと、バタリとベッドの上に落ちた。


同時に部屋のドアが開いて、男が二人なだれこんでくる。

「身元がわからないようにな。前に指示した通りにやれ」

若干青ざめた顔の二人の若い男は、小さく頷いた。

「わかったのか!」

林の口許に付いた女のルージュが、テカテカと異様に光る。

「は、はいっ」

すると彼は情事の痕跡をシャワーで洗い流し綺麗に身支度を調えると、何事もなかったかのように部屋を出た。

瞬きをしなくなってもなお何か言いたげな真梨子の目が、そんな林の後ろ姿を見ていた。