はぐれ雲。

「気を遣ってるだなんて…考えすぎよ。でも離婚したほうがいいって、その時はそう思ったの。達也さんのためだって。でも、彼は…」

「達也先輩のためって言って離婚して、その後は新明先輩のところへ行くつもりだったわけ?」

彼女の言葉には、明らかにトゲがあった。

「ううん。それはあり得ない。それに彼とは、新明くんとはもう会わない」

「嘘」

達也の自分を想ってくれる気持ちに応えたい。

それを時間がかかっても彼は待つと言ってくれた。

達也とやり直したい、そう心から思ったこと。

詰まりながらも、全てを親友に話した。


「何それ」

聞き終えた真梨子はふんぞりかえるように、背もたれに身を委ねた。

そして鼻で笑ったかと思うと、目を吊り上げて言った。

「新明先輩が警察に目をつけられてヤバくなったから、もう関係を清算して、今度は達也先輩のところに戻るわけ?公務員だもんね、安泰よね。つまりは自分の保身のために、新明先輩を切ったわけ」

目の前の親友から飛び出た言葉に、博子は身を乗り出した。

その勢いで、テーブルが揺れ、カチャンとカトラリーが小さく悲鳴をあげる。

「そう思われても仕方ないと思ってる。でも真梨子、私は絶対にそんなこと…!」