はぐれ雲。



その夜、二人は肌を合わせた。

お互いに指をからめ、離さなかった。

「博子」

達也が優しくキスをする。

柔らかい唇が吸い付いてくるように、達也を求める。


「…本当にあなたのそばにいてもいいの?」

カーテンを通して入る月明かりの中で、博子はささやくように聞いた。

白い肌が一層その光の中で映える。

「ああ」

達也はそっと頬を撫でた。

寒さで鳥肌の立つ、そんな博子を彼は包み込むように抱く。


もう離さない

もう離れない


二人は何度も見つめ合った。



腕の中で眠る博子を見ながら、達也は思った。

<博子。
君と新明は、自分でも気付かないほどにお互い強く相手を想っている。

だけど、俺はそれに見て見ぬふりをするよ。

だからいつか…

何年先でも、何十年先でもいい。

言ってくれないか。

誰よりも俺のことを愛してるって…

それまで待つよ。
ずっと、
じっと…博子…>